
スケールの課題は合格するけれど、
新しい曲の譜読みが早くならない…

曲の中でスムーズに指が動かない…

臨時記号に振り回される…

そもそも何のために練習するのか?がわからない…
という話をよく聞きます。
せっかくスケールを一生懸命練習しているのに、それが実際の曲に活かされないって、メチャクチャもったいない!!!
そこで今回は、
・なぜスケール練習の効果が曲に現れにくいのか?の理由
・スケールを練習する目的
・指導にすぐ活かせる練習のコツに
ついてお伝えします!
なぜスケール練習の効果を感じられないの?
生徒さんがスケール練習のメリットを実感できない原因は、これらが多いです。
・合格することだけを目的とした、その場しのぎ(場当たり的)な練習になっている
・音をあまり聴かずに、指を動かすだけの「指の運動」になってしまっている
・そもそも、スケールをどう曲に活用すればよいのか分かっていない
つまり、「何のためにこの練習をしているのか」の目的意識を持たずに取り組んでいるケースが多いです 。
では、スケール練習の目的とは何でしょうか?
大きく分けると、つぎの2つの力を育てることにあります 。
1、音を聴くため(音の役割を聴く力)
2、指を鍵盤に自然に置けるようにするため(鍵盤感覚)
これらを意識するだけで、生徒さんのスケール練習は驚くほど変化します。
それぞれの目的について詳しく見ていきましょう。
目的①:「音の役割」を耳で聴くこと
ここで言う「音を聴く」とは、単に音の高さが合っているのを確認するだけでなく、「音の役割を聴く」ということです 。
音にはそれぞれ大切な役割があります 。
例えば、和音分析でもおなじみの、以下のような感覚です。

・トニック:お家に帰ってきたような「終わった感じ」がする音
・ドミナント:お家へ進みたくなる「終わらない感じ」がする音
耳を馴染ませ、音の「方向」を感じる
例えば、ごくシンプルな「ドレミファソ」の5つの音で考えましょう 。

この中で、「ド」は終わった感じがする音で、
「ソ」は終わらない感じがする音です 。

レッスンで「ドレミファソ」を弾く前に、まずはこの響きを生徒さんの耳に馴染ませます 。
そして、「ド」からスタートして、終わらない音である「ソ」に向かってメロディが進んでいくことを意識します。

その「終わらない音に向かって進む流れ」を耳で聴きながら弾くと、不思議なことに、指が自然にスムーズに動きやすくなることが多いのです 。
逆に、「ソファミレド」と下るメロディであれば、スタートの「ソ」から、終わった感じのする「ド」に向かって落ち着いていく流れを感じながら弾きます 。

この終わった感じに向かう流れを耳で聴きながら弾くことで、音楽的な流れが生まれ、指が自然と動きやすくなります 。
1音ずつの「指の運動」から「メロディ」へ
もし、こうした音同士の関係や向かう方向(流れ)を感じずに、「次はレ、次はミ…」と1音ずつバラバラに指を動かしていると、音名は読めても「メロディ」には聴こえません 。
これでは耳に馴染まないためスムーズに弾きにくく、なにより弾いていて楽しくありませんよね 。
そのため、レッスンでは以下のステップがとてもおすすめです。
1、音の役割や方向性を理解する
2、頭の中で歌いながら(または実際に声に出して歌いながら)弾く
「歌えるか」「聴けているか」を確認し、歌いながら(または脳内で歌いながら)弾いてもらう。
すると、それまでつっかえていたフレーズが、急にスムーズに弾けるようになることも多いです。
(そのためにはソルフェージュを並行して指導する必要があります)
また、この「音の役割を聴く力」や「スケールの仕組み」が身につくと、後々以下のような学びへスムーズに繋がっていきます。
・和音の仕組みや、和音の移り変わり(コード進行)の理解
・曲の途中で出てくる臨時記号の役割の理解
目的②:指先でポジションを捉える「鍵盤感覚」
もう一つの目的は、スケールという隣り合う音のメロディをスムーズに弾くことを通して、「黒鍵の並びや鍵盤の位置関係を、指先で捉える感覚(=鍵盤感覚)」を養うことです 。
このとき大切なのは、「1本1本の指でその都度鍵盤を探す」のではなく、「5本の指のセット(ポジション)をどのように置くか」という視点を持つことです 。
ト長調(Gメジャー)の場合
例えば、ファにシャープ(♯)がつくト長調のスケールの場合、
よくある弾き方は、「まず白い鍵盤(白鍵)を弾いていって、ファの時に黒い鍵盤(黒鍵)に指を乗せる」という捉え方。
でも鍵盤感覚を養う視点から見ると、次のようにポジション単位で指先を馴染ませていきます 。
・ポジション1:右手で、最初に5本の指をすべて白鍵の上に置く感覚

・ポジション2:指をくぐらせた後、4番の指が黒鍵に乗るポジションの感覚

このように、「すべての指が白鍵に乗っている感覚」と「4番の指が黒鍵に乗る感覚」の、2箇所のまとまった鍵盤の感覚を指先で捉えながら練習するのがコツです。
この感覚を、脳内で音名(階名)を歌いながら弾くことで、目的の鍵盤に指を素早く乗せられるようになります。
1つずつ鍵盤を探す手間がないため、テンポを上げて弾くのも格段に楽!!
楽譜と鍵盤の「視線の往復」から解放される!
実際の曲では、隣り合う音だけでなく、様々なポジションへ手を移動させて弾く場面がたくさん出てきますね 。
でも様々なポジションの鍵盤感覚が手に馴染んでいると、鍵盤を触ったときに「しっくりはまる感覚」が得られます。
そのため、「間違えるかもしれない」という不安が減り、安心してのびのびと弾けるようになります 。
さらに、鍵盤を探す作業を「指先(触覚)」に任せられるようになるため、目が「楽譜と鍵盤を何度も往復する」必要がなくなります 。
目が楽譜を見ることに集中できるようになるため、結果として譜読みのスピードが劇的に早くなるのです。
「聴く(耳)」×「鍵盤感覚(指)」の合体が生む効果
スケール練習で最も重要なのは、この「聴くこと(音の役割の理解)」と「鍵盤感覚」の合体 。

「この音のときには、指をここに置いて、この指で弾く」という感覚が耳と指の動きに馴染んでくると、次のような変化が現れます。
本来のテンポの6割〜8割くらいの速さであれば、ミスなく、止まることなくスムーズに弾けるようになります 。(それ以上の速さで弾くには手首や腕の使い方といった「テクニック」の工夫が必要ですが、8割程度まではこの2つの掛け合わせでカバーできます)
音の役割や法則(理論・スケールの仕組み)が耳に馴染んでいると、「次はミだっけ?ファだっけ?」「シャープはつくんだっけ?」の迷いがなくなります。
迷いがなくなるからこそ、速いテンポでも自信を持って弾けるようになります。
単なる指番号や黒鍵の位置を丸暗記するだけの「暗記の練習」は、しばらく弾かないとすぐに忘れてしまい、応用も効きません。
でも、耳と手の感覚を繋げて覚えたスケールは、忘れずに自分の引き出しとして積み重なっていくため、「あれだけ練習したのにできなくなった」ということが激減します。
まずは「5つの音」から始めよう!
なので、スケールを譜読みや演奏に活かすには、最終的にはすべての調やポジションで弾けるようになることが目標です。
でも、いきなりオクターブ(7音)のスケールを練習するのは、生徒さんにとっては案外大変なもの。
そこでおすすめしたいのが、「ドレミファソ」の5つの音(5音)に減らして行うスケール練習。
この5音スケールは、特別な方法ではありません。
日本でも親しまれている「バイエル」や「バーナム」といった有名なピアノメソッドでも、最初にスケール感覚を掴むステップとして導入されている王道の練習手順です。
いきなり難しい動きをするのではないからこそ、音の役割や指先のポジション感覚にじっくりと集中できるという大きなメリットがあります。
スケール練習の楽しさを、生徒さんへ
一般的には、「スケール練習って退屈で面白くない……」と言われることが多いですよね。
実は、私もかつては「つまらない……」と思っていた一人でした。
ですが、今回ご紹介したような「音の役割を聴く耳」と「鍵盤感覚」を意識するようになってから、ここ5年くらいは本当に楽しめるようになってきたのです。
今では、「美しいスケール」を目指してあれこれ響きやタッチを工夫していると、気がつけばあっという間に1時間が経っていた!ということもあるくらい。
生徒さんでも「スケール練習好きです!」という方がチラホラいます。
(残念ながらまだ全員じゃないけど…)
「指を動かす作業」として取り組むとつまらないスケールも、「耳」と「指先」をフルに使って美しい響きを追求する「音楽的な体験」に変わると、こんなにも没頭できて楽しいものになるんですよね。
生徒さんたちにも、ただの暗記の宿題として弾かせるのではなく、ぜひ「音を聴く楽しさ」「ピタッとはまる鍵盤感覚の心地よさ」をレッスンで伝えていきたいですね。
詳しい解説動画はこちら
ピアノ指導の教科書


