どこを弾いてるか分からなくなるのはなぜ?(模倣の場合)

ピアノアドヴェンチャーの
アッチェレレイテッドシリーズで
「聖者の行進」を弾いてる生徒ちゃん。

生徒
生徒

どこを弾いてるか分からなくなるの…

同じメロディーが
繰り返されるだけなのにね…
混乱するようです。

なぜ混乱するの?


でも演奏を聴くと、
本来4拍伸ばす音が1拍で終わってます。


昔だったら、
「ちゃんと4拍伸ばしてね!」だったけど

そもそもなぜ1拍になるのか?
を考えると

原因は「聴き方」です。

おそらくこんな感じ。

これは分からなくなる…

では
どうしてこんな聴き方になるのでしょうか?


根本的原因は、
2人の人が歌ってるように
聴けてないから
です。

模倣とは?

そもそもこの「聖者の行進」は
「パターンを模倣する」を学ぶ曲。

子供向けのベーシックシリーズの「聖者の行進」は、「パターンを繰り返す」という手法を学びますが、
アッチェレレイテッドやアダルトシリーズでは、「パターンを模倣する」を学びます。


「パターンを模倣する」とは、
片方のメロディーを
もう片方の手で真似する方法。

2人が掛け合いをしながら歌うように弾く方法です。


このスキルは
後にポリフォニーや
インベンションにつながりますし

立体的な表現の土台になります。

今回の生徒ちゃんは、
ちゃんと楽譜を見ながら演奏していますが、

先のように
左右のメロディーが合体した聴き方をしてるので

どこを演奏しているのかが
分からなくなるようです。

2人が歌ってるのではなく
1人で歌ってる感覚なんですね。


なので
「4拍伸ばしてね!」の指示だけで
4拍伸ばせたとしても


「模倣」を体験しながら演奏できないと、
この曲を学ぶ意味はありません。

ですので、
「模倣」を習得(または体験)するための
指導をします。

どうやって模倣を体験するの?

模倣を身につける段階はさまざまですが、
今回は「2人が歌っているような感覚」
を体験することが目標。

つまり、
「片方のメロディーを聴きながら、もう片方を演奏する」
ということです。


でも、この聴き方は慣れるまで難しく、
「聴いてね!」の指示だけでは弾けないもの。

なので
・「聴いてる」とはどういう状態か?
・どうすれば聴けるか?

を指導する必要があります。

今回の曲では、
重要なのは2小節目。

左手:伸ばす音を聴きながら
右手:別の旋律を演奏する

部分です。


左右ともにメロディーだったら
難しいですが、

今回のように
片方が伸びてるだけなら
まだ弾きやすいです。


ですので、
この易しい段階で「二人が歌っているような感覚」

つまり、
自分がメロディーを歌ってる時、
他のメロディーも聴こえてくる感覚

を養っておきたいですね。


そこでオススメなのが、
歌う練習。

実はこの後、2人で歌のアンサンブルをするので
つられないように歌える必要があります。

なので先生は
両手で楽譜通りに演奏しながら、
生徒と一緒に歌います。

指導手順

1、右手を歌う
  (歌に集中)

2、左手を聴きながら右手を歌う
  (歌いながらも他方のメロディーにも耳を傾ける)

3、左手を歌う
  (歌に集中)

4、右手を聴きながら左手を歌う
  (歌いながらも他方のメロディーにも耳を傾ける)

5、先生:左手を小さな声で歌う 生徒:右手を歌う
  (先生の小さな歌につられずに自力で歌えるか?を試す)

6、先生:左手を大きな声で歌う 生徒:右手を歌う
  (先生の大きな歌につられずに自力で歌えるか?を試す)

7、先生:右手を小さな声で歌う 生徒:左手を歌う
  (先生の小さな歌につられずに自力で歌えるか?を試す)

8、先生:右手を大きな声で歌う 生徒:左手を歌う
  (先生の大きな歌につられずに自力で歌えるか?を試す)

合計して7、8回。
時間にして5分くらいです。

その後、
左手を優先的に聴きながら演奏すると、
迷うことなく演奏できました。

一応移調しても問題ありません。
速く演奏しても問題ありません。

今回はこれでうまくいきましたが、
もしうまくいかなかったら、
ピッチの精度を高めて行います。



すると、
伸ばせてなかった全音符も、

「ちゃんと伸ばしてね!」なんて言わなくても
伸ばして演奏されます。

なぜなら、
2人の演奏者がアンサンブルしてるように聞こえるので、
伸ばしたくなるからです。

このような
「2人が歌ってるような感覚」で演奏できると、

2人が対話しているように聞こえるので、
演奏するのが楽しいです。

本当に、耳の使い方が重要だな…
と思います。

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